統計学の「再発明」 その2

<熊本地震で被害に遭われた皆様に、心からお見舞い申し上げます>

前回は「統計学」を起点とし、会社組織などの情報の重要性と困難さを考察してみた。
今回は、「組織における情報」を考えてみたい。

 

まず、佐藤優さんが雑誌で書かれた記事に、「組織における情報」についての興味深い記事があったので、紹介をしたい。

 

一言で「情報」といっても、intelligence(インテリジェンス)と
information(インフォメーション)とに、大別されると指摘している。

information(インフォメーション)
⇒・intelligenceを作成する材料(素材)

intelligence(インテリジェンス)
⇒・informationから生成されたもの
 ・組織においては、比較・弁別・統合という思考作用を加味して処理した生成物 

しかし、組織においては「先入観」が、これらの情報を瑕疵させている事に言及され、

「情報分析の父」と呼ばれたシャーマン・ケイン氏の著作から次の事を指摘している。

「先入観と合致しない知識を伝達しても仕方がないと観念した時点で、自らを頼るほかなくなってしまう。その時、理性と科学的手法は、背を向けていることを自覚すべき」と。

また、このようにも、記している。

「(実際は)定時に情報会議を開催し、生起している軍事動向等に関する動態報告を行うのが常である。そのため、要員は一刻たりとも気を抜けず、動態情報を収集し、過去データを照合し、定時にプロダクトを作成して情報会議に臨むことになる。
こうした要員にとって相手国の歴史、文化および政治体制といった分野を勉強する余裕はない」と。 

 これって、自分達にも、良くある話じゃね?と。まず、「先入観」そのものが、なかなか手強いものである。前回の記事のごとく、専門家が正しいとは限らない。反省と心がけという思いをのせて記せば、他者がそう思っていると知覚しながら、自己の「先入観」と向き合わなければならない。

●「思考の積み重ね」が、新しい扉を開くというのか?

別の観点から考えてみよう。

現在の情報社会は、調べたい事が即座に見つかる「検索社会」と言っても過言ではない。以前であれば、組織にいる事で得られた情報が、個人でも簡単に得られる。
また、個人からの発信もBlogやSNSなどによって手軽にできる、本当に有難い時代である。一方で、個人が処理出来ないほどの膨大な情報の波に翻弄されるというリスクも持ち合わせている。 

一番恐れるべきは、情報に流され、思考停止する事である。

しかし、『学び、考え続ける』というのは、集中力を保ち続ける「根気強さ」と時間的・金銭的・精神的な「労力」と、そして、わずかな光を頼りにした「終わりの見えない感覚」との、鍔迫り合いである。

 

だからこそ、まずは、統計科学の考え方を理解し、一貫性のある対応が構築できる「人材の開発」が急務と考えている。

 さて、一番最初の話に戻してみたい。

 

そう、統計学の『再発明』」である。

 

統計学は業界それぞれに「最適化」が施されていると「統計学の過去現在未来」の記述を読むと拝する事ができる。自分がいた「工学」の世界でも、統計学的管理手法という名の元、独自の進化を遂げ先鋭化している。当然、表記や統計学そのものや分野毎の事象への見識不足は努力で解決する必要はある。

しかし、技法が先鋭化する事で、他分野からの思考・アイディアの転用が上手くいってないのが現実ではなかろうか?前回の記事で論じた、専門家の存在によって見解と対立する情報を退けるといった弊害がある。また、業務慣行は変えられることなく、専門家が推奨したことのみが実行される大きな壁が存在する。

結果として、統計学の間違いで表された統計学における分布や標準偏差についての基礎知識やまたは、(試験・モデル構築)の設計・検証に対する教育や運用が上手く出来ているとは考え難く、小生も含めて考えなくてはならない。

ここで、一旦話をまとめてみよう。

佐藤優氏の「情報」には、intelligence(インテリジェンス)と information(インフォメーション)とに大別されると指摘。その中で、現場での経験や「先入観」の払拭をしない限り、情報そのものが瑕疵があると扱われる。現場の要員には、周辺の知識を学ぶ機会を与えられる状況になく、報告項目の範囲から逸れると回答できなくなる。学び考え続けるには、多くの「労力・集中力」または、それらの困難に立ち向かう「動機付け」を求めている。「統計学の再発明」においては、前回記事の論点の一つ「専門家・組織そのものの壁」が、統計学の基礎的知識である標準偏差や(試験・モデル構築)の設計・検証に対する教育や運用が上手く出来ているとは考え難くと論じさせて頂いた。

 

次回は、これらの諸問題点にどうアプローチ出来るのか?を考察してみたい。