統計学の「再発明」 その3

<熊本地震で被害に遭われた皆様に、心からお見舞い申し上げます>

 

前回の記事では、組織における情報を深く考察を重ねてみた。

今回は、前回提示した問題群へのアプローチについて、考えてみたい。

そのため、いくつかの例示を試みたい。

誠に恐縮ではあるが、統計学からは一旦は離れてしまうが、しばらくお付き合いいただきたい。

 

発明的問題解決「TRIZ

まずは、「TRIZ」をご存知であろうか?簡単ではあるが、触れておきたい。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/TRIZ

http://www.engineer.or.jp/c_topics/001/attached/attach_1029_1.pdf

 

「発明的問題解決理論」と言われており、一時期、話題に挙がっていた。

この理論の提案者であるアルトシュトラーは、発明の中にアイディアを得る手がかりとし、

出願特許を分析し、問題解決への科学的・体型的アポローチを模索する。

この理論の中で「問題解決の5つのレベル」があると記述されている。

 

1.最適化のみ

2.技術的矛盾が解決

3.システムの本質的解決

4.新しい技術システム開発

5.新しい科学的原理や法則の発見

 

この中で、上記の3.以降を「発明的問題解決」と定義している。

問題の解決は、少数の「発明原理」と戦略(「究極の理想解」を用いた戦略)によって革新が生まれると提唱。

現場において基本的なものと仮定している「対立やトレードオフ」を探し出して「破壊」する事だ、と述べている。

ここで、通常よく行われているであろうアプローチと、TRIZが提唱する考え方を比較してみたい。

 

通常のアプローチ

・「現行のシステム」を、出発点としている。

・持続的な改善が、常時行われている。

・収穫逓減(ていげん)の法則により、時間的経過とともに、

大きな努力を行っても、より小さなレベルの改善しか達成出来ない。

 

「究極の理想解」を用いた戦略

・「究極の理想解」を、出発点としている。

・一連の解決策を後退させながら、開発を進める。

・実現可能な解決策まで繰り返す。

 

確かに、抜本的に見直しによってシステムの性能のレベルアップや組織の生産性の向上といった事は考えられる。

しかし、それらが本当の意味での根本的な解決だったのか?と問われると内部の人間であっても、時として返答に窮する。

 

特に組織としては、システムやルールの高度化・洗練化に伴い、従業員には教育を受けて、新たなルールや自由度の元、運用に頭を悩まさなければならない。また、最前線の管理者の脳裏には、「現行のシステムとの差異」によって手順・情報・イメージなどをメンバーと共に再確認し、最適化する作業も行わなければならない。

●管理者の「頭痛のタネ」

もっと端的に言えば、管理者にとって従業員に「何かをしてほしい」という指示を出すことより、

『何をしてはいけないのか』を伝える事が困難を伴う。

 

http://kamimura0219.hatenablog.com/entry/2016/02/07/231234

 

(手前味噌ですが)

 

ここでも触れているが、作業に従事するメンバーの習慣化された手順や思い込みに対して、

頭ごなしに「ダメだ!」と伝えても、従業員自身に困惑と焦りが残る。

作業をするメンバーには作業をしない事に伴う「情報ロス」と、

新たな「情報」や手順、イメージへの対応が伴うだろう。

 

また、そもそも「現行システム」での対応しか残されていない管理者にとっては、

「収穫逓減の法則が‥‥。」「経験が‥‥。」と、嘆く事もままならないまま、

前述の通り、目の前の業務の最適化だけが、目下の目標という悲しい事態も想定される。

 

なんとまあ、自分の身に詰まされる話が続いている。

もう少しのお付き合いを、ご容赦いただきたい。

何を持って、評価するのか??

トヨタの「自工程完結」という書籍が出版され、話題となっている。

 

 

頑張っているのに結果が出ない。そんな人を出さないためにトヨタ全社で進めている「自工程完結」の考え方。意思決定を迅速にするために、誰かワンマンリーダーが来て、さっと話を決めて動けばいいかというと、そうではないであろう。

いろいろな人の知恵を集めた上で、素早く意思決定をする。そんな考えの元、

「マニュアルをしっかり考えて整備する」ことが

自工程完結だと要約している。

 

また、こんな指摘もしている。

 

上司と部下のすれ違いの理由としては、

次の6つがあると著者は指摘しています。

 

1. なんのために資料をまとめるのか、「目的」の共有がない。

2. どんな資料をまとめるのか、「アウトプットイメージ」を共有していない。

3. どうやって資料をつくるのか、具体的な「手順」が共有できていない。

4. それぞれの仕事で、どういう状態であれば大丈夫なのかが共有されていない。

5. 仕事に必要な情報をもれなく把握できていない。

6. 手順やルールには、なぜそうするのか「ワケ」があるのに、勝手に判断してしまう。

 

http://www.lifehacker.jp/2015/12/151202book_to_read.html

 

「目的」「イメージ」「手順」「状態」「情報」「ワケ」

 

作業者が、この六つのどれかが逸脱と判断した時に、

上司である管理者は、残念な顔をしたくなる。

特に、管理者が苦労するであろう事は、作業者をする方々から

その「目的」と「イメージ」と「ワケ(理由)」を求められた時であろう。

「アップグレード」するような内容は、景気付けて励ましていけば問題はないだろう。

しかし真逆の「ダウングレード」するような内容はどうだろうか?

 

例えば、今までお咎めもなく行えていた業務慣行。

ある日突然「禁止です!」となった時。

それこそ、先述した目的観・新しい業務慣行のイメージ・また明文化されていないその「理由」を、

管理者から作業者に伝えなくてはならない。

どうやら、ここで話が、以前に示した「概念図」に帰着するようだ。

正直、これは難題のようである。(頭痛がっ!)

 

さて、いつものようにまとめてみよう。

 

「発明的問題解決理論」と言われたTRIZ。究極解によるアプローチを示してくれた。

しかし、現実は、この今、目の前の業務の最適化に翻弄される。

管理者が骨を折るのは、作業者に『何をしてはいけないのか』を伝える事や、「ダウングレード」するような内容であり、今までの業務慣行の手直しだけにとどまらず、管理者と作業者が目的観・業務フローのイメージ・なぜそうなのかという理由も提示し、共有せねばならない。

 

そうなると、次回は「組織におけるコミュニケーション」というアプローチから考察してみたい。

(とはいえ、完全にノープランであるが。)